「自分で考えたアイデアをアプリにしたいけれど、プログラミングなんてできないし……」と諦めていませんか?
今、生成AIの進化によって、その常識が大きく覆されています。なんと、プログラムコードを1行も書けない「非エンジニア」が、生成AIとのチャット(壁打ち)だけで、実用的で非常に高度なWebアプリケーションを完成させた事例が登場しました。
そのアプリが、こちらの「もしもの公的保障スピードシミュレーター」です。
今回は、このシミュレーターの制作過程を紐解きながら、「AIを使ってアプリを作るプロセス」と、「これからの時代に本当に必要なスキル」について考えていきます。
1. 生成AIとの「壁打ち」で進化した開発プロセス
このシミュレーターの製作者は、ITを専門としない非エンジニア。プログラミングの知識は全くありませんでした。しかし、ChatGPTやClaudeといった生成AIをパートナーにし、何度も対話を繰り返す(壁打ちする)ことで、アプリを形にしていきました。
最初は、非常にシンプルなアイデアからスタートしました。
第1ステップ:シンプルな機能からスタート
最初は、「年齢」「年収」「家族構成」を入力すると、大まかな保障額が表示されるだけの簡易的なフォームでした。これだけでも形にはなりますが、実用性には少し欠けていました。
第2ステップ:対話を重ねて「かゆい所に手が届く」機能へ進化
製作者はAIと会話を重ねながら、日本の公的保障(年金や手当)の複雑なルールをアプリに落とし込んでいきました。
- 厚生年金の加入期間による変化: 「厚生年金に何年加入していたかによって、将来もらえる遺族年金や障害年金の金額が変わるはず」という点に着目し、加入月数を調整できるスライダーと、それに連動した計算ロジックを追加。
- 子どもの手当ての支給期間判定: 児童手当や遺族年金の子の加算は、子どもが一定の年齢に達すると支給が終わります。「子どもがいつまで対象になるか」を自動判定し、家族の年齢推移に合わせた受給額の変化(段差)をタイムラインで視覚化できるように改善。
- ビジュアルと使いやすさの向上: Chart.jsを使ったグラフ描画や、疑問をその場で解決できる「よくある質問(20のQ&A)」のアコーディオン機能を追加。
結果として、専門のアナリストが使うような「2026年最新法改正対応の超精密なシミュレーター」へと変貌を遂げたのです。
2. なぜ非エンジニアがここまで高度なものを作れたのか?
答えは、「AIがすべてのコーディングを担当し、人間が『仕様のディレクション』に専念したから」です。
人間が「厚生年金の月数によって金額を変えたい」「子どもの年齢に応じてグラフの段差を表現したい」と言葉で指示を出すと、AIはその意図を汲み取ってHTMLやJavaScriptのコードを瞬時に生成してくれます。バグが出ても、「動かないから直して」と伝えるだけでAIが自己修正します。
プログラミング言語の文法を覚える必要はなく、「どんなアプリにしたいか」を日本語でAIに伝え、調整を繰り返すスキル(プロンプトによる対話)さえあれば、アイデアを形にできる時代がすでに到来しているのです。
3. AI時代だからこそ「学び」と「業界の知識」が明暗を分ける
会話さえできれば誰でもアプリが作れる。一見、誰でも簡単にイノベーターになれるように思えます。しかし、ここに大きな落とし穴があります。
それは、「そもそもの制度や業界の知識がなければ、AIに指示すら出せない」という点です。
今回のシミュレーターが素晴らしい仕上がりになったのは、製作者に「公的保険や年金制度に対する深い知識」があったからです。
- 「厚生年金の通算加入月数が25年未満だと最低保証が適用される」
- 「遺族年金には中高齢寡婦加算という仕組みがある」
- 「児童手当の支給対象年齢は高校生まで引き上げられた」
こういった専門知識(ドメイン知識)を持っていたからこそ、「ここを再現するロジックを書いて」とAIに的確な指示を出すことができました。もし業界の知識がゼロであれば、AIに対して「年齢と年収で計算して」という大雑把な指示しか出せず、ありふれた機能の薄いアプリしか作れなかったでしょう。
AIは「コードの書き方」は知っていますが、「ユーザーが本当に求めている細かい制度のルール」は、人間が教えてあげなければ正しく実装できません。
まとめ:AI時代に必要なのは「学び続けること」
AIを使えば、技術的なハードル(プログラミング)はほぼゼロになります。だからこそ、今後は「人間側の知識の深さや課題発見力」が価値を持ちます。
- 「自分の業界には、どんな不便や課題があるだろう?」
- 「それを解決するための専門的なルールや仕組みはどうなっているだろう?」
こうした知識を蓄え、学び続ける姿勢がある人だけが、AIという強力な武器を使いこなして「かゆい所に手が届く」サービスを生み出すことができます。
「プログラミングができないから」と諦める必要はもうありません。まずはあなたの持つ知識や興味のある分野について深く学び、AIと一緒に新しいものづくりに挑戦してみませんか?
今回ご紹介したアプリ
- アプリ名: もしもの公的保障スピードシミュレーター
- URL: https://kazukun-k.github.io/insurance-simulator/
- 主な機能: 性別、働き方、厚生年金の加入月数、家族構成から、万が一の時に受け取れる公的保障ロードマップをグラフとタイムラインで自動算出。